公的支援制度の申請についてのアンケート結果と今後の対応について

5月に実施しました「公的支援制度の申請に関するアンケート」へのご協力ありがとうございました。

以下に回答の集計を匿名の形に修正して公開いたします。

 


「DIPG患者の公的支援制度の申請に関するアンケート」集計結果


 

◎37名という限られた回答数からの推測となりますが、DIPGの患者の場合、支援制度の認定が上手くいかないのではという点に関しては、各制度は、意外にも普通に認定されているのではないかという結果でした。

 

◎特に今回の調査の中心のテーマである「身体障害者手帳」の取得には、22名(60%)の方が申請され、20名(90%)の方が認定されており、2名(10%)の方が認定されていません。また、認定がスムーズに行かなかった印象の方で、かかった期間を記憶されている方9名のうち、7名(約80%弱)の方が、1~2ヶ月という期間で取得されています。また、3ヶ月以上の方は2名(20%)という結果でした。実は、どんな疾患の患者でも障害認定には、1ヶ月~2ヶ月を要するという事が分かっています。つまりある程度「通常通りに認定されている」のではないかという結果かと思います。

 

◎障害認定の流れとしては以下のようになっています。

1.病院で申請書類の作成 ▶︎

2.市町村の窓口への提出 ▶︎

3.月に1回都道府県での書類審査 ▶︎

4.認定(手帳取得)

つまり、「2.市町村」より、月に一度の「3.都道府県での書類審査」の日までに、かなりタイミングよく書類が届けば、その月の審査となり、1ヶ月あまりで認定されますが、それに間に合わない場合は翌月に回されます。よって認定には、少なくとも2ヶ月はかかります。また、ここで書類に不備等があるとされると、さらに伸びてしまいますが、通常なら平均2ヶ月で取得できる仕組みです。

 

◎よって、今回のアンケートの結果からは、一部の方を除き、DIPGだから審査・認定が遅いというような事は無いようでした。また、気になっていた「申請窓口の対応」も平均的な対応で、特に悪いといった印象を持った方もあまり多くはありませんでした。

 

◎ただ、それでも「認定が遅い」「時間がかかる」と感じられた回答者の皆様のお気持ちは当然理解できます。DIPGは余命1年と告知される重病です。病気はどんどん進んで行きます。1分1秒でも貴重ですので、たとえ時間的に他の病気と同様に普通に取得できても、どうしても遅いという印象となります。そしてまた「申請したが認定までに間に合わなかった」といういくつかのご意見には、私自身の経験も重なり大変重い思いを抱かざるを得ません。

 

◎寄せられたご意見の多くが「認定の迅速化が必要」というもので、確かに認定がもっと早ければ多くの問題が解決すると考えられます。しかし、例えば、法律的に月に1度と決められている都道府県の審査を2度にしたり、DIPG患者だけ審査を急いで欲しい・・・というのは、たとえ会として国に請願しても、他の病気との兼ね合いもあり、かなり難しいと事と思われます。なので現在できる現実的な方法は、診断直後から初期治療開始前後ぐらいのなるべく失調症状が残る早期のタイミングで書類作成に取り掛かり、申請し、少しでも早く身体障害者手帳を取得するという事かと思います。

 

◎しかし、その点で、ひとつの大きな問題点があります。認定に3ヶ月以上かかっている方の原因でもあるのですが、病院での申請書類作成がスムーズに行かないというものです。申請書類は、認定資格を持つ指定医によって書かれます。DIPGは、最も重篤な小児がんですが、初期の放射線治療で一時的な回復が見られます。そこで「永続する障害」という条件に果たして当てはまるのかどうかを、主治医や指定医がすぐに判断できず、また、6ヶ月の症状固定という規定と相まって、なかなか申請書類を書いてくれないというケースがあるようです。

 

◎今回のアンケートの結果により、公的支援制度に関して、皆様が抱いている多くの問題点が分かりましたが、その中で、当会としては、まずこの、なかなか申請書類を書いてくれないという問題をどうにかしたいと思いました。それはまさに、2017年に厚生労働省から各地方自治体の障害福祉課に通達された「通知書」で触れられている事でもあります。

 

◎この「通知書」に関しては、以前から会としては申請窓口への提出を皆様に提案しておりましたが、アンケートの結果、申請時や審査の段階での問題はあまり感じられない事から、むしろ、迅速な認定のために、申請の前の書類作成時の段階で、この「通知書」を活用すべきではないかという考えに至りました。

 

◎今回のアンケートでは、この「通知書」対して「何のための文書か分からない」という疑問もたくさんいただいていますが、この文書は、小児脳幹部グリオーマの障害認定に関して、判断の難しい条件のひとつとなってる「永続する障害」(症状固定)に関する解釈を国が示したものです。その要旨は、急速に症状が悪化していくDIPGのような疾患は (たとえ一時的に回復しても) 治癒は難しい事から「永続する障害」と解釈できるので、認定して良いとするものです。しかし、希少疾患という事もあり、医療者側にこの通知に対する正しい理解がされていないという事がアンケート結果からも伺えました。

 

◎要するに、DIPG患者の障害認定の迅速化には、病院の主治医や申請書類を書く指定医の解釈がひとつの壁となっていることが分かってきました。そこで、当会としては、応急措置的ではありますが、対抗策として、小児脳幹部グリオーマシンポジウム開催実行委員会の名義で、「障害者手帳申請に関する要望書」を作成してみました。

 

◎これは厚労省からの「通知書」を見ても、DIPG患者にとって早期の申請の重要さへの理解が及ばない医師に対して、その「通知書」が通達された意味を解説したものです。

 

◎よって、障害者手帳の申請依頼の際には、従来の「通知書」3枚と、この「要望書」1枚を病院側(主治医・指定医)にお見せいただければ、これまでより申請書類作成の迅速化につながるのではないかと考えました。この対応でしばらく様子を見ていただき、例えば、かえって医師の気分を害して、何か言われたなどの問題があった場合は、すぐにご意見をお寄せいただきたいと思います。

 

◎各書類のPDFは下記になります。この4枚の書類を印刷の上、病院(主治医・指定医)にご提出ください。(できましたら念のため役所の申請窓口への提出もしてみてください)

 

◎ただし、医師に書類作成をできるだけ促したいという主旨のため「要望書」には闘病中の皆様にとって、とても厳しい内容が記載されています事をご了承ください。また、このような早期申請の依頼は、ほとんどの医師にとって、前例のない初めての事になるため、ある程度、ご家族側からの「説得」が伴うかもしれません。また、小児慢性制度と同時期の申請には大変煩雑な作業を伴います。精神的、物理的に重荷と感じたら、無理をせず、次の申請の機会を待ってください。

※資料

御牧由子氏 (静岡がんセンター ソーシャルワーカー) よりアンケートに関するコメントをいただきました。


◎上に掲載しました御牧氏のご意見の中の「若年がん患者在宅療養生活支援事業」は、各自治体が独自に行っているものですが、小児慢性制度の認定者は対象外となっている場合が多いようです。小児慢性制度の年齢を過ぎたがんサバイバーのための制度という側面があるようですが、小児慢性資格取得者でも、訪問介護や訪問入浴への支援はある様です。アンケートの中の回答にも、自治体の制度を利用された方のご意見がありました。自治体によって支援内容にバラつきはある様ですが、身障者手帳が間に合わなかった方は、居住地の自治体に問い合わせてみるのも良いかもしれません。


◉成育医療センター 寺島慶太医師からの注意点

◎早期申請は、あまり前例がないため、病院の考えによっては、次のような注意が必要となるかもしれません。

◎診断早期の申請は症状が改善した場合に等級変更が必要になることがあるかもしれません。
手帳を交付された時の身体の状態が、診断書記載時の等級と違っていると、等級変更のためにまた診断書記載からやり直しになることがあるかもしれません。

◎障害の程度が軽いと最初からリクライニング型の車いすの作成が認められないケースなどもあるようです。その場合、最初はレンタルで状態に合わせて、車いすを乗り換えていくようなやり方もあります。入浴サービスなども、年齢や条件によって使えないこともあるようで、そのあたりはソーシャルワーカー等にご相談いただくこともあるかもしれません。
◎上記の自治体の支援制度等を上手く組み合わせて活用していく方法も考えられます。


◎今回のアンケート調査は、「申請がスムーズに行かない」という会員の皆様のご意見から出発しましたが、その他の問題として、闘病中の申請自体、書類を集めたり、役所まで申請に行かなければならないなど、相当の手間ひまがかかり、ご家族の負担となっている問題や、日常生活用具給付の手続きに時間がかかる、条件が厳しいなど制度の使い勝手が悪かったり、所得制限のご家庭では国の公的制度が使えない事、認定されるまでかなりの自己負担になっている実態、制度を利用したい時に、認定が間に合わないなど、申請から認定の迅速化の問題をはじめとして、制度の運用面でも、皆様よりかなり多岐にわたる問題点が指摘されていました。今後、これらの問題も考えていかなければならないと思っています。

 

以上となります。